高知公演のご報告~やったかいはありました~
日日刻々Reading theater in高知「私の帰る処 → 幸福な夢」無事に終えることができました。
雨のなか会場に足を運んでくださったお客さま、オンライン稽古のみ、仕上げは現場でという不安な状況のなか、落ち着いて取り組んでくれた5人の出演者、アフタートークのゲストを引き受けてくださった広井護先生、西村和洋さん、そして誠心誠意支えてくれた少数精鋭のスタッフのみなさんに、心より感謝申し上げます。
実質は綱渡りのような状況でありながら、色んなことが驚くほどうまくいった公演でした。こんなことは今まで一度もなかったので少々不安になり、浮かれていると次に何かとんでもないことが起こるのではないかと、落ち着かない気持ちでこの一ヶ月を過ごしていました。
中でもキセキだと思ったのはお客様の数です。公演一週間前、予約数は40人でした。高知の人はスロースタートだと言われても、これは大変なことになったと思い、終了後の支払いの算段をあれこれ考えたりしていました。結果は、二日間とも満席になり、約120人の方が観てくださいました。
これは高知の出演者の力はもちろんですが、何といっても初めからずっと協力、応援、宣伝をし続けてくれた中学高校の同級生、塩見由利さんと門田幹也くんの力によるものです。このご恩はたぶん返しきれないのですが、少しでも高知での活動を継続していくこと、面白い戯曲を書いていくことで返していきたいと思っています。
リーディング公演の内容も、とても満足できる仕上がりになりました。数年前からリーディングの魅力と可能性について考え続けていて、自分のなかに明確なイメージはありました。けれども、短い準備期間でどこまで実現できるかという懸念は大きく、そのイメージに限りなく近いものをこの目で見たとき、やっぱりこれでよかったんだ、思っていた通りだった! という深い感動がありました。それは2020年夏に中止(延期)になってしまったリーディング公演で試してみるつもりだった方法なのですが、新作ではなく上演済みの旧作で、シンプルなテーマを持つ二つの短編で試すことができたのは幸運でした。そして魅力的な役者たち、超マイペースで私の想定をかき乱してくれたチャーミングな刈谷公治さん、画面越しでも最初から安心感を感じさせてくれた畠中昌子さん、繊細な演技で20歳若い役も難なくこなした吉良佳晃さん、貪欲な役作りで成長し続けた山田紫織さん、抜群の求心力で座組をまとめてくれた石村みかさん、それぞれの真摯な取り組みに結果がついてきたのだと感じています。
お客様のアンケートにも、まさにリーディングの魅力を表す嬉しい感想がたくさんありました。ごく一部をご紹介します。
・耳で聞いて、世界や表情を目に浮かべて… とても新鮮な感覚でした
・よけいなものがそぎ落とされていて、すごく入りこめました
・とても想像力がかきたてられた
・朗読なのにとても印象的な景色が想像できました
・見ている側の想像を要するため、ある種の観客参加型のような気持になりました
※
2016年に12年ぶりの公演を行った時の緊張と恐怖もすごかったですが、高知公演の本番前はそれ以上の恐怖感がありました。おそらくそれは、40年前に自分の気持ちに反して高知を離れなくてはならなくなり、逃げるように上京した辛い記憶の影響が大きかったと思います。けれど懐かしい同級生の顔を見て、演劇部の後輩たちの声を聞いて、なにか温かいものに包まれるように少しずつ緊張がほぐれていくのがわかりました。大げさに感じるかも知れませんが、故郷の街を心からリラックスして歩けることは幸せなことです。
さらに今回の成功は、一年暮らしてヒントさえつかめなかった鶴岡での活動についても、勇気と希望をもたらしてくれました。夫から「大博打だね」と心配そうに諦めたように言われ、ほんとうにやるのか? と何度も自問自答しましたが、やったかいはありました!
最後になりましたが、高知のキャスティングから始まり、大小さまざまな相談から当日の音響・照明まで最大限のサポートをしてくださった吉田剛治さんに、とても感謝しています。ほんとうに、ありがとうございました。
2024年・小満 いしざわみな
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