日々読書~村上春樹いろいろ
ただいま、久しぶりに楽しい読書の日々を送っています。
戯曲を書く前や執筆中は、背景の参考となるものを読むことが多いので、旗揚げ公演から春の公演が終了するまで、小説はほどんど読んでいませんでした。
村上春樹の新作が発売されて、すぐに読みたかったのですが、ちょうど公演の準備中だったので、ぐっと我慢して、なるべく内容についての情報を入れないように努めていました。そしてゴールデンウィーク後半に読み初め、至福の数日間を過ごしました。この本には色んな車が出てくるのですが、私は車というものに疎く、ジャガーといえばネコ科の動物が浮かぶ状況…… そんなわけで、
一つずつ車のデザインを確認しながら二度目の読みに入ったところです。
村上さんの原作を舞台化した作品を、二本観たことがあります。
一本は、一年前に亡くなられた蜷川幸雄さんが2012年に演出した『海辺のカフカ』です。これは村上さんの著作のなかでも、繰り返し読んでいる好きなものの一つです。
私は本を読んだ後、舞台化・映像化するとしたらどんなキャスティングがいいかと思い巡らせるのが大好きなのですが、初めて読んだ時から、この本に登場する“佐伯さん”というミステリアスな女性の役は、絶対に田中裕子だと思っていました。とはいえ、出版されてから年月も経ち、もうそのキャスティングはないなと思っていたところ、田中裕子さんが演じるというので、彩の国さいたま芸術劇場まで足を運んだのです。
全体としては、前後編の長編を舞台化しているので省かれた場面も多く、わかりにくい点もありましたが、舞台装置に工夫があり、楽しく観劇しました。何より、蜷川さん自ら舞台化したいと取り組まれたという話を聞いて、いくつになっても守りに入らず挑戦する、その姿勢に最も感銘を受けました。主人公の少年を演じた柳楽優弥もよかったです。
もう一本は、2003年に『エレファント・バニッシュ』という作品を世田谷パブリックシアターで観ました。これは短編「象の消滅」「パン屋再襲撃」「眠り」の三篇を舞台化したもので、演出はサイモン・マクバーニーというイギリスの方。これも「象の消滅」と「パン屋再襲撃」が大好きな作品でしたが、どんな風に舞台化するのか想像もつかず、むしろ不安を抱いて観に行きました。
結果としては、とても面白い作品でした。舞台美術が素晴らしく、視覚的な魅力にあふれた作品でした。そして堺雅人さんが良かった! 今はTVで活躍している堺さんですが、私にとっては今もこの時の演技が一番です。